【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2014年3月号)
『富士山のまりも 夏休み自由研究50年後の大発見』
亀田良成 文
斉藤俊行 絵
福音館書店 刊
2021年3月30日 発行
1430円(税込)
40ページ

ある一家の庭で、半世紀育まれたまりもの物語ーー

富士山に「まりも」が生息しているとは、知りませんでした! みなさんはご存じでしたか。
小学生のころ、わが家のテレビの上に大きめのビンにはいった阿寒湖のまりもがありました…。不思議だなあと思って眺めてはいましたが、まん丸い緑色のそれが、どうなったのか顛末は記憶にありません(ヒドイ!)。

さて、著者は子どものころ、いわゆる「田舎」と呼べる場所がなく友人を羨ましく思っていたそうです。そして8歳のとき、クラスメートの家族が毎年夏休みに出かける山中湖に母親と一緒に行くことになりました。
そこで山中湖から持ち帰ったのが、茶色っぽい緑の2センチほどの藻のかたまりーー地元で「ししの糞」と呼ばれている小さなまりもでした。
湖の水でゆすぎ汚れを落としたら、きれいな緑色になりました。おもしろいので家で育ててみようとジャムの空きびんに入れました。これが著者の山中湖のまりもとのであいだったそうです。
それから持ち帰ったまりもは、大きなビンに移しかえて居間の窓際に置いていました。

そして5年生になったとき、山中湖とまりものことを自由研究の題材にと決めます。が、研究をするにはまりもの数が少ないのでは、と父親がゴールデンウィークに山中湖へまりもの採取にでかけます(すごい!)。まりもの数が増えてビンでは狭くなったので、水槽に移しかえて育てて観察を続けました。
著者によれば、まりもは数が増えたり、日によって浮いたり沈んだり、植物なのに動きがあって、観察していて飽きることはなかったそうです。そうして夏休みをかけて、自由研究「山中湖の研究」を完成させました。
その後も実家で水槽に入ったまりもは大切に育てられつつも、特に注目されることもなく庭の景色の一部になっていきました。

それから50年あまりの時が過ぎたころ、ひょんなことから山中湖のまりもに関する論文を見つけました。驚くことに丸い形のまりもは絶滅に近い状況になっていると書かれていました!
庭のまりもが唯一の生き残り? 早速、国立科学博物館に連絡をしてみましたーー。

子どものころの自由研究が!? という驚きに満ちた物語です。こんなことって本当にあるんだ、と思いました。静かに進む展開に先の読めないドキドキを味わいました。
すぐに結果を求めがちな昨今ですが、今すぐにわからないことだって意味がないわけじゃない。わからなくたっていいじゃん、と思えます。 (す)

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