
【たくさんのふしぎ40th】🤔 (1993年12月号)
『森へ』
星野道夫 文・写真
福音館書店 刊
1996年9月20日 発行
1430円(税込)
40ページ
南アラスカの原生林のものがたり
表紙一面には鬱蒼と茂った森。ページをめくると靄の中から海と木々の姿がぼんやりと現れます。水面にはカヌーが一隻浮かんでいて、静けさの中から水を打つオールの音が聞こえてきそうです。ここは南アラスカからカナダにかけて広がる原生林。著者である星野道夫さんはアラスカの自然と生きものを長年撮り続けた写真家。写真からは土や水のにおいや空気の冷たさ、森の気配が感じられ、1ページごとに集中して見入ってしまいます。人の住まない森の中に足を踏み入れ、クマのつくった道をたどって奥へと進む星野さんの写真から、連綿と続く命の営みを感じる作品です。
苔むした巨木群を歩いていくと根が足のように生えた不思議な木に出会います。まるで立っているかのような木の根に大きな穴があいているのです。これは年老いて死んでしまった巨木が倒れ、その倒木から芽吹いた種子から生まれた若木を育てていたからなのです。栄養を与えつくして消えていった倒木の跡がその穴なのです。まさに、森は生きています。また、後半ではクマたちの集まる大きな川が現れます。そのにはサケの大群が。「サケが森をつくる」という言葉はアラスカの森にすむインディアンたちの言葉だそうですが、産卵を終えたたくさんのサケは上流から下流に流され、森全体を育むのです。
森を抜けた星野さんはカヌーを漕いで再び海へ。自然に対する畏敬の念を改めて感じる作品です。(ほ)
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