【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2022年8月号)
『石は元素の案内人』
田中陵二 文・写真
福音館書店 刊
2024年1月10日 発行
1430円(税込)
48ページ
世界はなにでできている?
表紙に写っている色とりどりの石。きれいですね。専門的にはこうした石は鉱物と呼ばれています。鉱物というのは、その物質を構成している元素の種類と、元素がその鉱物をどのように構成しているのか決まっている石のことです。では、元素とは何でしょうか。地球上に存在するあらゆる物質は小さな粒が組み合わさってできています。粒はとても小さく、目で見ることはできません。現在118種が見つかっているその粒の種類を、私たちは元素と呼んでいます。元素というのはその種類に限った呼び方であり、一つ一つの粒そのものは「原子」といいます。ではなぜ物質を構成しているものが元素であることがわかったのでしょうか。それは昔の人たちの素朴な疑問と探究心があってこその発見です。
昔の人は、ある鉱物が別の離れた場所で採れた鉱物とよく似た形をしていることを不思議に思いました。このことから、鉱物の中には目に見えない小さな粒が規則正しく並び、それが目に見える結晶という形となって現れているのではないかと考えるようになりました。やがてその仮説はある鉱物学者の偶然の発見によって立証されます。方解石という鉱物を落として割ってしまったことで、どの欠片の割れ口も決まった方向に沿って平らに割れていることを発見したのです。当時は鉱物の構造を知ることはできませんでしたが、今ではその規則正しい配列は特別な電子顕微鏡で確認ができます。規則正しく配列した固まりが複数組み合わさることで物質が成り立つ様子が、本書では塩の結晶を例にみることができますので、興味のある方はぜひご覧ください。
今まで、原子一つ一つの粒は目でみることはできないとお伝えしていました。確かに原子そのものをみることはできませんが、原子の固まりは目で見ることができます。例えば「鉄」です。物質には1種類の原子のみで構成されたものと、複数の種類の原子で構成されたものがあります。鉄はFeという原子のみで構成されているので、純粋な鉄は原子の固まり、ということになります。純粋な鉄を得るのは難しいことではありません。砂場や砂浜でみられる砂鉄は、磁鉄鉱という鉱物です。磁鉄鉱は鉄原子と酸素原子で構成されているので、ここから酸素を取ることができれば、鉄が得られます。砂場や砂浜で集めた砂鉄を炭と一緒に熱すると、炭が砂鉄から酸素を奪うので、「鉄」になります。このほかにも熱を使って取り出すことができる元素が載っていますよ。火を使うので十分な注意が必要ですが、安全を確保したうえで、こうした実験をご家族でやってみるのも面白いですね。
地球は様々な鉱物であふれています。表紙や裏表紙に鉱物の写真が載っていますが、それはほんの一例です。(裏に写真の鉱物が紹介されています。そちらもぜひご確認を!)こうした鉱物を見て不思議に思った人たちの疑問が出発点となり、顔料にしたり、金属を取り出したりと生活に活用するための工夫によって知識が蓄積し、目に見えない元素の発見へとたどりついたことに感動します。まさに「石は元素の案内人」、ですね。本書の最後では、著者が撮影した元素の写真を周期表にまとめたものをみることができます。元素、それ自体はそれぞれとても美しく、まるで宝石のようです。こうした存在がこの世界のあらゆるものを形作っていると考えると、世界の見え方が変わってきませんか?人も、動物も、本も、スマホも。みんな同じ元素でできているのです。(ほ)
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