太平洋戦争が終結して今年は80年目になります。日本はこの80年間、国家としての戦争はしてきませんでした。戦争の記憶が遠ざかる一方で近年、勇ましい言説を耳にすることが増えているような不安を覚えます。私たちは戦争がひとりひとりの人間に何をもたらすのか、本当に理解しているのでしょうか。戦争を体験していない世代こそ「戦争とは何か」を知ろうとする努力を怠ってはいけないと思います。
今年は各出版社が戦後80年という節目を機に、とても良い本を刊行しています。絵本、フィクション、ノンフィクション色々なジャンルで戦争を考える作品が出ていますので、皆さんもぜひご覧になってください。その中でもこの夏ぜひ読んでほしい絵本を2冊ご紹介します。
『一郎くんの写真 日章旗の持ち主をさがして』は、福音館書店の月刊絵本「たくさんのふしぎ」で2019年に刊行されたもののハードカバー版です。著者は新聞記者で、アメリカで見つかった「一郎くんへ」と書かれた日の丸の旗(日本の兵隊さんがお守りとして持って行ったもの)の持ち主を探す中で、一郎くんをめぐる様々な人の思いに触れていきます。一郎くんは1943年南方戦線で戦死しました、22歳でした。戦争ではたくさんの「一郎くん」が生まれ、大切な人を亡くした悲しみを生涯抱えて生きなければならなかった一郎くんのお母さんのような人も大勢生み出しました。このような理不尽が二度と起きないようにしなければならないという、著者の強い思いを感じる作品です。
『いま、日本は戦争をしている 太平洋戦争のときの子どもたち』は、堀川理万子さんが3年以上の年月をかけて取材と制作に取り組んだ作品です。戦争当時、6歳~17歳だった17人の方にインタビューをし、その時何を見てどう感じたのかを文章と絵で表現しました。子どもたち一人ひとりの体験は辛いばかりではなく、子どもらしい感性で辛い中にも素朴な喜びを見出す子があれば、子どもらしいまっすぐな目で大人の欺瞞を見抜く子もあります。それでもすべての生活の背後には確実に戦争の影があり、そこから逃れられた人はいません。一人の子どもが体験したことを通して、戦争の愚かさや理不尽をリアルに感じさせてくれる大作です。こちらは近日ナルニア国にて原画展を開催いたしますので、ぜひ堀川さんの素晴らしい原画を見にいらしてください!
⭐堀川理万子『いま、日本は戦争をしている』原画展 2025年7月25日(金)~8月31日(日) ナルニアホールにて
『一郎くんの写真』木原育子 文/沢野ひとし 絵/福音館書店 1430円(税込)
『いま、日本は戦争をしている』堀川理万子 文と絵/小峰書店 4180円(税込)
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