クリーンヒット⚾ フィクション
『アオナギの巣立つ森では』
にしがきようこ 作
小峰書店 刊
2023年10月 発行
1760円(税込)
237ページ
対象:小学校高学年から

奥多摩の自然のなかで心を育む3人の子どもたち

ーケッケッケッ
高い木のてっぺんから鋭い鳴き声が降ってきた。地面には、親指ほどの白い羽が落ちている。鳴き声の主は、少し前まで絶滅危惧種と言われていたオオタカで、巣の中にはヒナの姿もあった。偶然か必然か、この珍しい出会いをしたのは、小学6年生の遠山あおばと成沢梛(なぎ)。天敵などに襲われないよう、2人がオオタカの巣を見守ることにした矢先、オオタカとヒナを狙った密猟者の立ち入りが発覚する。お金のことしか考えない人たちに憤るあおばと梛のもとに、ある協力者があらわれて……。

舞台は奥多摩。本作では、小学6年生にしてすでに鍛冶屋の刀匠(刀を作る人)になりたい夢を持つ梛と、バスケットボールの選手に憧れを抱く穂希に対し、これといって夢がない主人公の少年あおばが、互いに心を通わせながら未来を見つめる姿が描かれる。

さらに、自然環境についても多く触れられており「絶滅がかわいそうだと思っても、自分には何も出来ない」のではなく、たとえば「オオタカがかっこいい」と思うことが「失いたくない」という思いに繋がり「絶滅を止めるはじめの一歩」なのだと教えてくれる。

子どもたちが、互いに交流を深めながら自分の思いと向き合い、心を変化させていく様子は力強く、勇ましい。私も負けていられないと、空を見上げたくなる結末だった。(み)

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