クリーンヒット⚾ フィクション
『パフィン島の灯台守』
マイケル・モーパーゴ 作
ベンジー・デイヴィス 絵
佐藤見果夢 訳
評論社 刊
2023年2月10日 発行
定価1,650円(税込)
112ページ
対象:小学校中学年

灯台守の老人と少年との、時を超えた心の通い

『戦火の馬』『アーニャは、きっと来る』(ともに評論社)などで知られるイギリスの児童文学作家マイケル・モーパーゴの最新作。嵐で遭難した船に乗っていた5歳の男の子と、彼を含む全員を救助したひとりの灯台守の老人との時を超えた友情を描いています。

ある大嵐の夜、ニューヨークからリバプールに向かう船が座礁し、乗客乗員30人が遭難する事故が起こりました。パフィン島の灯台守ベンはすぐさまボートを漕いで荒れ狂う海に救助に向かい、大人も子どもも一人残らず救い出しました。そして灯台に全員を招き入れ、温かい毛布と紅茶を配りますが、寡黙なベンは誰とも目を合わさず、にこりともしません。
灯台の壁にはたくさんの絵がかかっていました。その中でも「ぼく」の目を引いたのは、自分たちが乗っていたような船が灯台沖の海原を進む絵でした。翌日、救命艇で島を離れることになった「ぼく」に、ベンはその絵をくれました。その絵は、その後の「ぼく」とお母さんの辛い暮らしの中でも支えとなり励ましてくれました。それから12年後ーー。「ぼく」はベンに会いたいと、島に向かって旅に出ます。

12年越しの再会もつかの間、無情にも戦争が再び二人を引き離しますが、物語はそこで終わりではありません。短い話ながら、「ぼく」が苦境を乗り越えて成長する様子、孤高の老人ベンと友情を育む場面が丁寧にまとめられており、読み手の心を打ちます。それはモーパーゴならではのなせる業といえるでしょう。

ちなみに、「パフィン」とはウミスズメ科の鳥。同類に北海道などに生息する「エトピリカ」や北太平洋で見られる「ツノメドリ」などがいます。このパフィンも物語で重要な役割を担っています。じっくり読んでみてください。 (い)

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