クリーンヒット⚾ノンフィクション
『世にもあいまいなことばの秘密』
川添 愛 著
筑摩書房 刊
2023年12月 発行
990円(税込)
231ページ
対象:中学生以上

言葉のすれ違いを察知するために、頭のエクササイズをしよう

本書のテーマは「言葉の曖昧さ」。
曖昧で複数の解釈をもつ言葉は、コミュニケーションにおいて 時にすれ違いを引き起こします。SNSが普及し、誰でも気軽に言葉を発する機会が多い現代。そんな今必要なのは、言葉には曖昧さがあることを理解し、伝えたい気持ちを正しく相手に届ける力です。

あなたは、こんな経験をしたことがありますか?
断るつもりで「大丈夫です」といったのにもかかわらず、相手は「それでOKです」と、拒否ではなく 承諾の意味と勘違いして解釈をし、すれ違いが起きてしまったような経験が。
作家で言語学者でもある著者は、このような「湾曲的な言い方」がすれ違いをよぶこと、その曖昧さが詐欺の手口にも使われてしまうことを指摘しています。
では、そういうときはどうしたらいいのでしょう。著者は、「お気遣いいただかなくても大丈夫です」「ご提案のとおりでOKです」のように、より具体的な言葉と一緒に使うことで、曖昧さを消しているそうです。

しかし、曖昧さは完全になくすのは実質的に不可能だそう。その理由のひとつは、言葉にはしばしば「言外の意味」が込められていることにあります。
「言外の意味」とはなんでしょうか。著者は、実体験を交えながらたとえ話を使って説明してくれます。
たとえば、お風呂に入ろうとしない子どもに、親が「いつまでもお風呂に入らない子はだあれ?」と言ったところ、子どもは「ぼく」と答えたそう。このとき、親は「早くお風呂に入りなさい」という言外の意味を込めて伝えましたが、子どもは「単なる質問」だと受けとったのです。場面が想像できますね。 ほかの例もご紹介します。お菓子を食べているときのこと。一緒にいる人から「それ、おいしそうだね」と言われたら、あなたはこの言葉に込められた意味をどう受け取りますか?
このように、膨大な解釈を引き起こす言葉の不思議さを、身の回りでよくある出来事などを例に話を進めてくれるので、時に声に出して笑いながら、楽しく読み進めることができます。

曖昧な言葉があふれる世界において、どのような言葉選びをすれば、すれ違いを防げるのでしょう。それはぜひ、本書で明らかにしてください。章ごとに問題がいくつか用意されているので、知識が身になっていることを実感できて楽しいですよ。学生は、作文や小論文、レポート作成時に頼りになりそうですし、社会人は仕事でも使えること間違いなしの1冊です。 (み)

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