クリーンヒット⚾ フィクション
『ぼくらは星を見つけた』
戸森しるこ 作
講談社 刊
2023年5月 発行
定価1540円（税込）
207ページ
対象：小学校高学年から
丘の上のお屋敷に暮らす４人には、それぞれ秘密がありました――
丘の上にある素敵な西洋風のお屋敷には、パートナーに先立たれたそらさんが10歳の男の子・星（せい）と住み込みのハウスキーパー、シドさんと暮らしています。ある日のこと、「住みこみの家庭教師募集。男性歓迎。」という手紙にひかれて一人の青年、岬峻（みさき・たかし）がやって来ました。おしゃれな口ひげを生やし、黒いシルクハットをかぶった岬くんは、そらさんから面接で「ここでは先生ではなく家族になるのだ」と言われます。暮らし始めて間もなく、素直で物おじしない星は岬くんとすぐに仲良くなりますが、シドさんは岬くんのことが気に入らないようで、なぜが冷たく当たるのです……。
この本は家族についての物語です。誰もが一生懸命生きているのに、ボタンの掛け違えのような偶然が彼らの人生を少しずつ狂わせてしまったことがとても切なく感じられます。でも、人は良い出会いによって変わることができ、人の優しさが頑なな心を開かせることもある――生きることを温かく肯定するような物語に、読者の心の凝りもゆったりとほぐれていくような気がしました。
人は一人では生きていけない、でも幸せも家族の形もそれぞれでいい。「やさしい空の下でつながっていく未来」を私も自分の手で作っていきたいと思わせてくれる、健やかな児童文学です。（か）
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