クリーンヒット⚾️ノンフィクション
『捨てられる魚たち「未利用魚」から生まれた奇跡の灰干し弁当ものがたり』
梛木春幸 著
講談社 刊
1430円(税込)
2024年1月 発行
95ページ
対象:小学校高学年から


苦難の果てに誕生した奇跡の灰干し弁当

本書は、食育日本料理家である著者が「未利用魚」の問題を解決しようと試行錯誤し、灰干し弁当を誕生させるまでの、実際にあったおはなしです。
「未利用魚」と聞いて、どんな魚を思い浮かべますか?たとえば、ミノカサゴ、ホシザメ、アカエイなどがそうで、いまは高級魚として人気のあるノドグロ(アカムツ)も、かつては人気がなくて捨てられていたそうです。

「未利用魚」とは、美味しく食べられるものなのに、なんらかの理由で市場に出まわらない魚のことをいいます。なぜ水揚げされた魚を捨ててしまうのか、その理由は見た目(キズがないか、規格に準じた大きさかどうか)や価格(赤字にならないか)にあり、世界でもこうした未利用魚をうまく活用できないかが課題になっています。

魚をあつかう料理人としてこの問題をなんとかしたいと考えた著者は、自身が住む鹿児島の桜島の火山灰と、海でとれた未利用魚をつかった灰干しをつくることを思いつきます。灰干しは火山灰をつかって魚を乾燥させるため、魚のくさみが徹底的に取りのぞかれ、冷めてもおいしい特徴があります。しかし、自信満々で桜島の灰干しを商品化したものの、鹿児島に住む人たちにとって「火山灰=厄介者」というイメージがあり、食べものと組み合わせることが受け入れられず、周囲の人たちから大ひんしゅくをかうことになります。

それでも「みんなが反対するからこそ、やる価値がある」「だれもやっていないからこそ、おもしろい」と、日本全国の漁師や地方経済の助けになると信じて奮闘した著者。試行錯誤のすえに、「桜島灰干し弁当」を作成して販売した結果、道の駅で80個のお弁当を2時間で完売させます。さらに、鹿児島県中央駅のお弁当販売ランキングでは「桜島灰干し弁当」が売り上げ1位に。87か月ものあいだ、ずっと1位をとりつづけました。

2021年には、日本において約520トンの食べものが捨てられたといいます。未来のために、私たちにもできることがあると語りかけてくれる本書では、将来の夢がある子ども、さらに、やりたいことがない、大人になっても働きたくないと思う子どもへのメッセージも書かれています。多くの子ども、そして大人にも手にとってほしい1冊です。(み)

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