クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『「争い」入門』
ニキー・ウォーカー 著
高月園子 訳
亜紀書房 刊
2023年2月 発行
定価1760円(税込)
149ページ
対象:高校生から

対立、紛争、戦争の「しくみ」と「平和」について、誰にでも必要な基礎知識

見渡すと大きなものから小さなものまで、私たちの周りには“争いごと”があふれています。しかし、だからといってどの争いごともすべてが暴力に発展するとは限りません。なぜ人は争いごとを解決するのに暴力を用いてしまうのか(あるいは、暴力によらずに解決できる場合があるのか)を、紛争に共通する部分を取り出してその根本となる“争いの種”がどこにあるかを見つけようというのがこの本の目指すところです。ゆえに、特定の紛争についての言及は限られていますが、書かれている内容を現在の(もしくは自分の知る歴史上の)紛争・戦争に当てはめることで、なぜそれが起こったのかを自分なりに考えることができます。

どの争いごと(特に国際的な紛争)においてもその種は一つではなく、土地・資源・権力・安全・歴史など様々な要素が複雑に絡み合っていて問題を見えにくくしています。でも、ある集団間の意見の不一致が暴力に発展するのは、人々を“わたしたち”と“かれら”に分けて相手を敵とみなす時だと著者は言います。敵とする対象が安易なステレオタイプ(悪)に決めつけられ憎しみや恐怖があおられていくと、それは暴力の形で噴出してしまいます。互いに相手に対する不信感から相手の意見に耳を傾けようという姿勢が持てないため、“争いごと”の解決の手段が対話ではなく暴力になってしまうのです。

「人間の歴史は戦争の歴史だった。戦争は人間の本性なのだ」という見解があります。世界の現状を見ているとそんな言説を信じそうになりますが、実はその意見に科学的根拠はないそうです(1986年「暴力についてのセビリア声明」)。人間が戦争を引き起こすのならば、平和も人間の知恵と努力によって作られてきたものです。そして「本性なのだから仕方がない」と諦めるのではなく、どうすれば暴力を用いずに争いを解決できるかを粘り強く考え続け行動することが一人一人の責任でもあると思います。本書に紹介されたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉が、それを端的に教えてくれています。(か)

「人々が仲よくなれないのは
互いを恐れているからだ。
互いを恐れているのは
互いを知らないからだ。
互いを知らないのは、
互いに話し合ったことがないからだ。」

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