クリーンヒット⚾ フィクション
『本おじさんのまちかど図書館』
ウマ・クリシュナズワミー 著
長友恵子 訳
川原瑞丸 絵
フレーベル館 刊
2022年5月 発行
定価1540円（税込）
152ページ
対象：小学校中学年から
声をあげよう！ 大好きなこの図書館を守るために――
インドのある町に住む9歳のヤズミンは本が大好きで、毎日学校帰りに近所の＜まちかど図書館＞に寄って本を借りるのを日課にしています。図書館といってもここは元学校の先生だったおじさんが、自分の本を本好きの人たちにただで貸し出したり、字を教えたりしている場所で、近所の人たちの憩いの場所でもありました。そんな＜まちかど図書館＞に突然、市から立ち退きの警告が！ ヤズミンは大好きな図書館を存続させるために、友だちや町の人を巻き込んで立ち上がります。
ヤズミンは本を通していろいろなことを考えるだけでなく、問題解決のために行動を起こす実行力もあります。市長選の立候補者たちに＜まちかど図書館＞の存続を訴える手紙を書いたり、テレビ討論会でその手紙についての質問をしてもらったり、大人たちに選挙に行くように促したり……。「社会の厳しさを知らない子どもだから」と冷めた目で言うのは簡単ですが、実は世の中を動かすのは時に無謀とも思える熱い思いなのかもしれません。選挙が終わった後、ヤズミンは「この選挙に勝ったのは候補者ではなく私たち」であることを確認するために新市長を訪ねますが、この時の彼女の行動と言葉こそお任せではない“本物の民主主義”の姿だと私は感じました。（か）
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