クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『都市のくらしと野生動物の未来』
高槻成紀 著
岩波書店 刊
2023年7月20日 発行
定価1034円(税込)
208ページ
対象:中学生から

動物たちと向き合うために必要なこと

生態学者の著者が考える、人と動物のあり方とは?
まず自身が調べた東京のタヌキのくらしを紹介し、都会の野生動物と人との関係を考えます。ある動物が生きるということは、周りの動植物と深くつながっているということで、人間も動物のひとつであることを認識すべきと言います。
そして一見、関係ないように思える昭和の時代の人びとの暮らし方~自然との関わり~を記したのちに都市と人の暮らし、都市と野生動物について考えます。

巻末には「毒素案内」のページもあるので、もっと野生動物との関わりについて知りたい人の参考になるでしょう。

タヌキの食性や植物との関係の調査の方法や結果も興味深く読みましたが、5章「みなさんと生きものの未来」のなかの「公平な視点」で語られていることに大いに共感しました。わたしたちは知らず知らずのうちに、動物への偏見を持っているというのです。タヌキはまぬけ、カラスは不気味で怖い、オオカミは邪悪、というように。本当にそうなのか?  実際の動物をきちんと見ると決してそうではないことがわかります。生きものへの敬意をもち、正しい知識をもって向き合うことが大切、と思いました。見ようとすれば、まだまだ東京にだって野生動物はいるのですから! 銀座だってスズメもハクセキレイだっていますし、運がよければトンボにも出会えます。
著者の体験や知見を通して語られるメッセージを広く受け取ってほしいです。レッドデータの生きものだけでなく、ごく普通に見られる生きものの存在を軽視してはならないですね。いずれにしても、この地球上にヒトよりも長い時間、生命をつないできているのですから。  (す)

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