クリーンヒット ⚾ フィクション
『ひろしま絵日記』
中澤昌子 作
ささめやゆき 絵
小峰書店 刊
2025年6月 発行
1430円(税込)
71ページ
対象:小学校中学年から
『ひろしまの満月』のコンビによる、原爆と戦争の悲惨さを子どもたちに伝える幼年童話。
小学二年生のみなみちゃんは、夏休みにひいおばあちゃんの家へ一人でお泊りに行くことになりました。ひいおばあちゃんのふみこさんは90歳を過ぎても、元気に一人暮らしをしているおばあちゃんです。あまり気のりがしないままふみこさんの家に行ったみなみちゃんが、押し入れの奥から見つけた古ぼけたノート―― それはふみこさんの妹のまさこ(まあちゃん)が、みなみちゃんと同じ二年生の時に書いていた日記でした。「ひらいてみて、どこからでも」とふみこさんに促されて開いたのは、ひな祭りの日の日記。でもみなみちゃんにはわからないことだらけです。防空ごうってなに? なんでちらしずしもひなあられもなくて、お友だちも呼べないの? そうしてまあちゃんの日記を通して少しずつ、みなみちゃんはふみこさんから80年前の戦争の話を聞いていきます。ところがその日記も、8月5日の「あしたが、まちどおしいです。」という言葉を最後に、途絶えてしまいました。それは、一発の原子爆弾がまあちゃんの住んでいる街の上に落とされて、すべてが焼けてしまったから――まあちゃんはその日、家から5分の学校に行ったきり、80年経っても帰ってこないのです。
みなみちゃんにとって80年前の戦争はとてつもなく遠い出来事に違いありません。けれど自分と同い年で亡くなったまあちゃんの日記に触れることで、過去の戦争の現在とのつながりや、今も癒えることのないひいおばあちゃん(ふみこさん)の悲しみを感じ取っていきます。みなみちゃんは物語を読む子どもが自分を重ねられる主人公であり、子どもたちはみなみちゃんの体験を通して戦争の苦しみや理不尽を心に刻んでくれることでしょう。(か)
◆中澤晶子さんの作品では原爆を題材にした「ワタシゴト」のシリーズが小学校高学年の人たちにおススメです。過去の記事をご覧ください。⇒『あなたがいたところ』『いつものところで』
◆戦後80年で復刊されたこちらの2作品もぜひお読みください。
2025年6月復刊『新版 彼岸花はきつねのかんざし』朽木祥 作/ささめやゆき 絵/佼成出版社 1760円(税込)
2025年6月復刊『新版 広島の木に会いにいく 被爆樹木が見る未来』石田優子 著/偕成社 1650円(税込)
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