クリーンヒット ⚾ フィクション
『ボンジュール・トゥール』
ハン・フンソブ 著
キム・ジナ 絵
呉華順（オ スファン） 訳
影書房 刊
2024年2月 発行
1980円（税込）
217ページ
対象：中学生以上
少年たちの心の揺れや友情を描く エキゾチックな物語
韓国人の少年、12歳のボンジュは父の仕事の関係でフランスに暮らしています。一家はパリからフランス中部の町トゥールへ引っ越しをしてきたばかりで、彼はその日の晩に、部屋に備え付けられていた古い家具（机）の側面に「愛するわが祖国、愛するわが家族、生きぬかなければ」と刻まれたハングルを発見します。いったい誰がこのような言葉を残したのでしょうかーー。
そして、新しい学校のクラスメイトには髪を金色に染めた東洋人がいました。日本人のトシというこの少年はフランス語がうまく話せないボンジュをからかってみたり、かと思うと流ちょうな韓国語で話しかけてきたりします。いったいトシは何者なのでしょうかーー。
家具の文字とクラスメイトーー二つの謎を解こうとする中でボンジュは、「韓国人」であるという自分のルーツや、自国の歴史についても様々に思い悩み、考えていきます。しかし、なぜトシが「日本人」でありながら韓国語が話せるのか、その背後にある本当の理由を知った時、彼の苦しみと複雑な思いを受け止めたボンジュとトシの間には真の友情が生まれていくのでした。
様々な大人の事情に翻弄される子どもたちですが、子どもらしいまっすぐな好奇心が時に大きな壁を突破する力となることをこの物語は教えてくれます。ヨーロッパで暮らす少数のアジア人についてや、韓国と近隣諸国の関係など現代の問題がさりげなく物語の中に織り込まれていて、日本で暮らす我々にとっても発見のある作品です。（か）
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