クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『消えたモナ・リザ』
ニコラス・デイ 作
千葉茂樹 訳
小学館 刊
2025年5月 発行
1870円(税込)
272ページ
対象:小学校高学年から

レオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナ・リザ」を一躍有名にした大事件

1911年8月21日、パリのルーブル美術館から1枚の絵が盗まれました。15世紀に活躍したルネサンス期を代表する天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた小さな肖像画モナ・リザが、白昼堂々何者かによって展示室から持ち去られたのです。いったい、だれが、どうやって? ニュースは新聞報道のおかげで瞬く間に世界中に広がり、それまで知る人ぞ知る無名の肖像画だったモナ・リザは、世界的名画の仲間入りをすることになります。

犯人は保守作業員の制服である白い作業着を着て紛れ込み、休館日の美術館の警備の穴をぬってモナ・リザを持ち出します。展示室からなくなったことに最初に気づいた作業員たちは「安全な場所に移された」と思い込み、警備担当者は「記録をとるために写真スタジオに持っていかれた」(そういうことは度々あったそうです)と思い込み、定位置に絵がないことを認識しながら盗まれたことには気づきませんでした。たまたまこの絵を写生していた画家が、いつまでもモナ・リザが戻ってこないことに業を煮やしてしつこく尋ねたことでようやく盗難が発覚。その後に外された額と捨てられたドアノブが美術館の内外で見つかりますが、モナ・リザは完璧に姿を消してしまいました。この事件の捜査に当たった警視庁の責任者は当時の最新科学を用いて犯人を特定しようと努めますが、残念なことに「科学の衣をまとったあてずっぽう」がかえって事件を真相から遠ざけてしまう結果になります。様々な物的・状況証拠が、美術館の警備体制やモナ・リザの展示方法を良く知る内部の者の犯行であることを示していたにも関わらず、捜査官自身が偏見による誤った犯罪者像(=国際窃盗団)を描いてしまったために、ますます捜査は見当はずれの方向に進んでいってしまいました。その結果ピカソやアポリネールまでもが、この犯罪の容疑者として取り調べを受けることになるのです。さて、モナ・リザ盗難事件の本当の犯人はいったい誰で、この事件はどのように解決されたのでしょうか――。

1911年の絵画盗難事件とレオナルド・ダ・ヴィンチの生涯が交互に綴られる本作は、なぜモナ・リザが世界的名画になったのかを二つの視点から描くことで、名画とは何かを読者に考えさせます。またこの事件は、真実をありのままに見ることの難しさや、人間とは真実よりも「自分にとってあってほしい事実」に簡単に目をくらまされてしまうものだという教訓も与えてくれます。世界中をものすごいスピードで真偽不明な情報が流れている今、私たちは少しでもレオナルドのようなものの見方を意識して身につける必要がありそうです。最後に著者からのメッセージをご紹介します。 (か)

「ヴィンチェンツォ・ペルージャが犯人だと信じたものも、いたかもしれない。それは推測しないもの。それは観察するもの。思いこみを捨てて、ものごとをくっきりと見ることに一生をかけたもの。自分がなにをみつけるか、事前に知ろうとはしないもの。モナ・リザの盗難事件を解決できた人物がいるとしたら、それはレオナルド・ダ・ヴィンチその人だ。」(第12部:「わたしはレオナルド」252-253ページ)

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