クリーンヒット ⚾ フィクション
『わたしの名前はオクトーバー』
カチャ・ベーレン 作
こだまともこ 訳
評論社 刊
2024年1月 発行
定価1760円(税込)
258ページ
対象:小学校中学年から

2022年 カーネギー賞受賞作

父さんとわたしは森に住んでいる。わたしたちは野生だ。”母親とかいうひと”は、四歳のときに森から出ていった。わたしは、”母親とかいうひと”を憎んでいる。父さんとわたしを置いて、野生の暮らしから去っていった、その人を。

主人公は10歳の少女、オクトーバー。これまで学校に通ったことは一度もありませんし、友だちもいませんが、父さんとわたしの、ふたりだけの世界があれば十分でした。
しかし、11歳の誕生日を迎えた日、ふたりの平穏を揺るがす大きな出来事が起こり、ふたりは強制的に森を出ることに。オクトーバーは、ある事情から父さんと離れて”母親とかいうひと”と二人で暮らすこととなり、学校にも通い始めます。

一筋縄ではいかない、オクトーバーの新生活。これまで森の外の世界と隔絶した生活を送っていたため、彼女にとって森を離れて暮らす日々は、苦痛でしかありませんでした。”母親とかいう人”との不穏な関係はもちろん、11歳にして初めて通うこととなった、学校での人間関係にも思い悩みます。果たして、オクトーバーに安心できる「日常」は訪れるのでしょうか。

森から離れたくない彼女が、葛藤しながらも新生活に適応しようと励む姿には、心打たれます。彼女を支え、見守る両親の振る舞いは、親世代に響くものもあるかもしれません。

本作は、2022年にカーネギー賞を受賞しました。作者のカチャ・ベーレンは、授賞式の挨拶で「物語を共有することは、人生でもっとも大事なこと。なぜなら、物語=わたしたちの人生だから」と語ったそう。私たちが何気なく生きる日々も、ひとつしかない物語だと思うと、特別な気持ちになります。誰もが主人公であり、作者であり、誰かの運命のカギを握る、キーパーソンなのですから!(み)

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