ベスト👍 フィクション
『ロンドン・アイの謎』
シヴォーン・ダウド 著
越前敏弥 訳
東京創元社 刊
2022年7月 発行
定価2090円(税込)
252ページ
対象:中学生以上

閉ざされた観覧車のカプセルから、少年はなぜ、どうやって消えたのか?

ロンドンに住む12歳のテッドは他の人とは異なるしくみで動く不思議な脳を持つ少年(自身では“症候群”と呼んでいる)。ある時、両親と姉カットの4人家族のもとへ、母の妹であるグロリアおばさんが息子のサリムを連れてやって来る。二人はおばさんの新しい仕事でニューヨークへ移住する前に、テッドの家に寄ったのだ。ところがその翌日、見知らぬ男から譲り受けたチケットでロンドン名物の観覧車(ロンドン・アイ)に一人で乗ったサリムが、そのまま行方不明になってしまう。なぜサリムは降りてこなかったのかーー密室の観覧車のカプセルからいとこが消えた謎を解くために、テッドは勝気な姉と協力しつつロンドンの街を駆け抜ける!

テッドは言葉をその通りに受け取ってしまう性質があり、人の気持ちを読み取ることも苦手です。でも一つの物事を深く丹念に考えていくのは得意で(気象に関する知識は専門家並み!)、それがこの事件を解決するのに大いに役立ちます。そのような彼の性質は学校でからかわれる原因になったり、テッド自身人と違うことによる孤独も抱えています。けれども、いとこの失踪事件を追う中で少しずつ自分や周囲の人たちと折り合いをつける方法を見つけていく姿は清々しく、謎解きの快感と同じくらいテッドの成長が読者にとっては喜びと感じられることでしょう。親子や兄弟姉妹と家族の中にある様々な問題が、困難な状況を通して乗り越えられていく家族の物語でもあります。

将来を期待されつつ若くして亡くなった作家の遺した最良のミステリーであり、「ほかの人とはちがう」少年の心躍る成長物語を、YA世代だけでなく大人の方にも楽しんでいただきたいと思います。(か)

★作者のシヴォーン・ダウドは『ロンドン・アイの謎』を出版後まもなくガンで亡くなりました。構想だけが遺された続編はダウドの大ファンである作家のロビン・スティーブンスが引き継ぎ、2017年『グッゲンハイムの謎』として出版されました。翻訳者の越前敏弥さんは「同じ作者によると言われても信じてしまうほどだ。文体が似ているだけでなく、ミステリとしての構成の巧みさや、子供たちのすがすがしい成長物語としての完成度の高さも共通している。(『グッゲンハイムの謎』あとがきより)」と絶賛しています。ぜひ続けて2冊、テッドの名推理をお楽しみください。

ベスト👍 フィクション
『グッゲンハイムの謎』 誰が美術館から名画をぬすんだのか? 12歳の少年テッドの推理が冴える!
ロビン・スティーブンス 著
シヴォーン・ダウド 原案
越前敏弥 訳
東京創元社 刊
2022年12月 発行
定価2090円(税込)
265ページ
対象:中学生以上

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