ベスト👍 フィクション
『波あとが白く輝いている』
蒼沼洋人 著
角川書店 刊
2023年8月 発行
1650円(税込)
270ページ
対象:小学校高学年以上

母はあの日、わたしを託して、波に消えたー東日本大震災遺児の喪失と再生の物語

三船七海は小学校6年生。1歳の時に母と祖母を東日本大震災で亡くしました。
祖父と母の妹・汐里に温かく守られ育った七海は、震災の記憶も母の記憶も
ほとんどありません。
平穏な日々を送っていた七海でしたが、6年生になった2021年の年、
さざ波のように様々な出来事が押し寄せます。
-叔母汐里の結婚、親友に起きた事件、クラスメートとの小さな冒険、
そして亡き母の友人との出会いー
そんな中、七海は、母がかつて小学校での大行事「海光祭」の実行委員長を
していたことを知ります。
そして七海は、新型コロナ蔓延の只中、「海光祭」を復活させようと動き始めます・・・。

記憶にはなくても遠い彼方に確かにあった「思い出」が七海の中で、
次第に形になり温かな色彩が付いていく過程が胸を打ちます。
七海だけでなく、七海を取り巻く登場人物たちが実に繊細に丁寧に描かれています。
魅力的な大人たちがいることは、良き児童文学作品の大切な要素だなと、
この作品を読んで改めて感じました。
63回の講談社児童文学新人賞では佳作(大賞なし)でしたが、
受賞後かなりの改稿と加筆が行われたと聞きました。
より心を掴む作品になり世に出たことを嬉しく思います。

震災から13年の今年、「あの日のこと」を今知ろうとしている
たくさんの「七海さん」がいることに思いを馳せてほしいなと思います。

(く)

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