ベスト👍フィクション
『アナタノキモチ』
安田夏菜 作
文研出版 刊
2023年10月 発行
定価1760円(税込)
261ページ
対象:小学校高学年以上

 

人の気持ちは見えないからこそ、人は誰かのそばにいたくなる

 

ひよりには、自閉スペクトラム症の傾向がある従兄弟がいます。名前はハル。ハルは5歳の時に母親に置き去りにされて以来、ひよりが住む二世帯住宅で一緒に暮らしています。ハルは、その特性から人の気持ちを想像しにくく、コミュニケーションをとることが苦手です。

でも、人の気持ちがわからないのは、ハルだけでしょうか?

ひよりの通知表には「人の気持ちがわかり、困ったときには手を差しのべ、周りを明るくしてくれます」と書かれています。学級委員に推薦された自分を「なかなかいい感じ」だと思っていましたが、あるとき 無神経な親切心によって親友を傷つけてしまい、相手の気持ちがわからなかったことを後悔します。

気持ちがわからずすれ違ってしまうのは友人関係だけでなく、家族関係においても同じです。
ハルとひよりのおじいちゃんは気持ちを伝えるのが苦手で、すぐに怒鳴ります。
ひよりが受験の結果で落ち込んでしまっているときのこと。ひよりはおじいちゃんにかけられた言葉にひどく傷ついてしまいます。しかし、おじいちゃんがひよりに伝えたかったのは、ひよりの解釈とは異なる気持ちで……。おじいちゃんの言葉に隠された本当の気持ちとは。また、孫に話しかけようにも、なにを話していいかわからないおじいちゃんが、ひよりのためにおこなっていたあることとはいったい何でしょう。

本作は、ハル、ひより、おじいちゃん、それぞれの視点から物語が進みます。
家族・友人関係のこと、受験のことについてリアルに描きだされているので、小学校高学年の子どもにとっては、自身と重なる部分が多いかもしれません。(み)

 

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