ベスト👍フィクション
『ナイチンゲールが歌ってる』
ルーマー・ゴッデン 作
脇明子 訳
網中いづる 絵
岩波書店 刊
2023年12月 発行
定価1078円(税込)
394ページ
対象:小学校高学年から

さまざまな出来事をのりこえ、踊ること、生きることのよろこびに目ざめる少女の姿

ロッティはバレリーナに憧れる10歳の少女。ロンドンのハムステッドにある小さなバレエ団付のバレエ学校で学んでいます。母親は将来を嘱望されたバレリーナでしたが、ロッティを生んだときに亡くなり、彼女はバレエ団の専属衣装係である伯母に育てられていました。生活は決して豊かではありませんでしたが、素晴らしいバレエ教師のマダム・ホルバインの教えを受けながらバレエに打ち込む日々を通して、母親譲りの才能を開花させつつあるロッティに大きなチャンスが巡ってきます。寄宿制の王立バレエ学校中等部入学のための特別オーディションを受験する機会が与えられたのです。ところが、受験のための写真を撮りに行った日、ロッティは偶然ペットショップから盗まれたキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの子犬を助けることになります。愛らしい子犬にたちまち心を奪われたロッティは、いけないことだと知りながらプリンスと名付けたその子犬を自宅に連れて帰り、そこから子犬の世話と学校、家の仕事に東奔西走の日々が始まるのです……。

主人公のロッティはとても芯の強いまっすぐな少女です。そして彼女を取り巻く大人たちは欠点はあっても悪人はおらず、それぞれに愛情を込めてロッティを見守り、その成長を助けていきます。主人公が様々な試練を乗り越えて幸せをつかむ物語はまさに児童文学の王道です。このように紹介すると「現実にはあり得ないお花畑的物語=児童文学」と批難する人もいるかもしれません。けれどこれから長い人生を歩んでいこうとする人たちに「この世は生きるに値する」ことや、「人は基本的に善い者である」ことを伝えるのが児童文学の大きな役割だと私は信じています。その意味でこの物語は希望に溢れた作品として、読者の心を生きる力で満たしてくれるものです。複雑で先が見えにくい世の中だからこそ、このような物語が必要とされているのだと感じます。

タイトルの『ナイチンゲールが歌ってる』にはいったいどんな意味があるでしょうか? 物語を読み終えた時、読者はマダムの言葉の意味を深い感動と共に心に刻むことでしょう。(か)

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