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『ロッタの夢 オルコット一家と出会った少女』
ノーマ・ジョンストン 作
谷口由美子 訳
平澤朋子 絵
岩波書店 刊
2023年6月 発行
定価968円(税込)
316ページ
対象:小学校高学年から

『若草物語』を書いたルイザ・メイ・オルコットの一家との交流によって、生きる道を見つけた少女の物語。

1848年のアメリカ、マサチューセッツ州ボストン。ある事情でドイツから一家でやって来た12歳の少女ロッタは「アメリカへ行けば自由と教育の機会が与えらえる」という希望を早々に打ち砕かれます。待っているはずの父の友人はおらず、見知らぬ国で助けてくれる人もいない一家は、移民がひしめき合って暮らす狭いアパートで日々の食べものにも不自由するような困窮した生活を送っていました。そんな中で、もうじき赤ん坊が生まれるという時に、妻と子どもたちを残して父親が失踪。その上、兄のカールが盗みの疑いで牢屋に入れられてしまいます。いよいよ追い詰められたロッタに救いの手を差し伸べてくれたのが、デッダム通りに住むミセス・ブロンソン・オルコットという婦人でした――。

清教徒がアメリカ大陸に上陸してから約200年、貧しさや迫害から逃れて新天地に希望を託した移民の現実は厳しいものでした。作者はオルコット家の史実に、カルロッタ・ミュラー(ロッタ)という架空のドイツ移民一家の少女の物語を絡めることで、当時のアメリカ社会や女性の置かれた立場を描き出していきます。主人公のロッタが、教育者として先進的な考えを持ったオルコット氏や貧しい人々に寄り添い援助を惜しまないオルコット夫人とその娘たち――特に作家を目指す16歳のルーイ(ルイザ)――との交流を通して人生に希望を見出し、たくましく生き抜く術と心の強さを獲得していく過程はドラマチックで、読者を最後まで引きつけ夢中にさせます。
時に衝突をしながらも、心のうちに秘めた思いを打ち明けあい友情を育んだロッタとルーイ。短い時間ではありましたが、それぞれの成長にとってなくてはならない出会いだったことを、本を閉じた瞬間に読者は強く感じることでしょう。(か)

読み終わった後には『若草物語』(岩波少年文庫では上下巻で刊行)が読みたくなります。大人の方は『ルイザ 若草物語を生きた人』(東洋書林/2420円:税込)もぜひオススメです。

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