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『津田梅子 女子教育を拓く』
髙橋裕子 著
岩波ジュニア新書 刊
2022年9月 発行
定価968円(税込)
222ページ
対象:中学生以上

梅子からのバトン、つなげ、未来へ!

1864年に江戸で生まれた津田梅子は6歳で親元を離れ、5人の官費女子留学生うちの一人としてその後11年間をアメリカで暮らします。ホストファミリーのランマン夫妻には子どもがなく、梅子を実の子のように愛情をもって育てました。幼少期におけるアメリカでの家庭生活と教育は、その後の梅子の思想や行動に大きな影響を与えます。
日本政府が梅子ら女子留学生に期待したのは、生活習慣や価値観の総体を身につけることで「真の夫人」となり、近代国家建設に重要な子どもの教育に責任を負う「母親」の役割を果たすことでした。その証拠に、11年も学んできた梅子が帰国した時、彼女がその能力を活かして働く場は全く用意されていなかったのです。

高等教育を受けて自立(自活)することは、当時の日本社会が想定し、また期待した女性の生き方ではありませんでした。しかし梅子はそのような社会の偏見に負けることなく、自らが身につけた知識と教養、何より向学の精神を日本の女性たちに伝えていこうと生涯努力を続けました。二度の留学を経験した彼女は、アメリカで研究者としての道を往くこともできたかもしれませんが、あえて困難な道を選んで後進の教育に力を注いだことに梅子の強い信念を感じます。女性が男性と同様に学び、社会を支える一翼を担うことができるようになった背景には、梅子のように時代を切り拓いてきた人たちがいたことに、改めて思いを寄せたいと思いました。(か)

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