ベスト 👍 フィクション
『やねの上のカールソン リンドグレーン・コレクション』
アストリッド・リンドグレーン 作
イロン・ヴィークランド 絵
石井登志子 訳
岩波書店 刊
2025年12月 発行
2200円(税込)
214ページ
対象:小学校中学年から

こんなおじさん、見たことない!

ストックホルムのありふれたマンションに、ありふれた両親・兄姉と暮らす7歳のありふれた男の子リッレブロールがある春の夕暮れ時出会ったのは、背中についたプロペラでびゅんびゅん飛び回る小さなヘンテコなおじさんでした。カールソンと名乗るこの人は、おじさんにしてはかなり子どもっぽいところがあるように見えましたが、案の定、リッレブロールの部屋へ入ってくるとすぐに彼の蒸気機関車で遊び始め、パパと一緒の時にしか動かしてはいけないと言われていた機関車のアルコールランプに火をつけて、爆発させてしまうまではちょっとの時間しかありませんでした。まさにカールソンは「世界一のいたずら屋」というのにふさわしい存在です。この愉快でハチャメチャな友だちをリッレブロールは家族に紹介しようとしますが、肝心な時に彼は姿を消してしまうので、両親や兄姉たちからは「空想の友だち」だと思われてしまいます。マンションの屋上の小さな家に住んでいるカールソンは、それからも度々リッレブロールの部屋へやってきて、二人は一緒に(ちょっと危なくて、時に迷惑な)楽しいいたずらをあれこれやってみるのです。

どんな失敗をしでかしても「そんなこと、なんでもないや」とあっけらかんとしているカールソンは、子どもにとってはこんな風になって(言って)みたいと思える頼もしい友人なのでしょう。「ぼくは、うつくしくて、とびきりかしこくて、ちょうどいいくらい太っていて、一番いい年ごろなんだ」と言い切るところなど、世間の常識に縛られた大人が眉をしかめそうな性格でもあります。嘘つきでずるがしこいところがあるカールソンを「子どもの本の主人公にふさわしくない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、生涯徹底して子どもたちの味方であったリンドグレーンが、大人の目には不愉快にも映る主人公を敢えて描いたのかーー。「こうあるべき」に囚われている私たちは、カールソンを拒否する前に一度立ち止まる必要があるように思います。

ピッピ以上に破天荒で自由なカールソンが、制約の多い窮屈な毎日を生きている日本の子どもと大人の心に風穴を開けてくれることを期待しつつ、私自身も常識の掛け金を一度はずしてみてカールソンと一緒に「へいき、へいき、さわぐほどのことじゃない」と、失敗を恐れず楽しみを追及したいものです。戸惑いながらも最後は笑いで締めくくられる、文句なしに愉快で楽しい作品です。(か)

★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。

お問い合わせフォームへ