
ベスト 👍 フィクション
『ノアハム・ガーデンズの家』
ペネロピー・ライヴリー 著
斎藤倫子 訳
ゴブリン書房 刊
2025年9月 発行
1980円(税込)
336ページ
対象:中学生から
この世界は、遠い過去から続いている
イギリスで50年ものあいだ読み継がれてきた名作の初邦訳。
昔から翻訳児童文学を読んできた方には、この著者の名前は懐かしいかもしれません。カーネギー賞を受賞した『トーマス・ケンプの幽霊』(評論社、現在品切れ)が特に知られているでしょう。
さて。
本書は1970年代初頭のオックスフォードを舞台にした物語です。主人公は14歳の少女クレア。古い家具やたくさんの書籍であふれた大きな家に、大おばふたりと暮らしていました。高齢のふたりにかわって、家を切り盛りするのはクレアの役目です。
家計のやりくりに苦慮し、下宿人を置くことになります。
ある日、物置のトランクに人類学者だった曾祖父がニューギニアから持ち帰った楯を見つけます。それからクレアは楯にまつわる奇妙な夢を見るようになりましたーー。
クレアとおばたちとの会話が実に絶妙で、まじめな描写なのにも関わらず時折、なんともおかしくて笑いがこみあげてきました。このまじめなユーモアはイギリス文学ならでは、と言っていいのかも。
大おばたちが勉学に励んできた生き方は舞台となった時代から考えると、ずいぶん先進的だともいえます。このことをクレアは好意的、というか誇りに思っているようです。わたしもとても魅力的に感じました。
彼女たちの暮らしぶりが丁寧に描かれ、その空気感は居心地がよいです。
タイトルにもなっている「家」も主人公かもしれないですね。それは「グリーンノウ」や『トムは真夜中の庭で』などをうんだイギリスだからとも言えるのかなあ。
何かおもしろそうな気配を感じ、物語の冒頭からいっきに引き込まれてしまいました。
季節がだいぶ落ち着いてきた今日この頃、読書の秋にふさわしい1冊です。久しぶりに読み応えのある本に出合えました。読み終えるのが惜しい、と思いつつページを閉じました。
造本も派手さはないけれど、落ち着いた美しいものになっています。カバーを外すと物語にでてきた「あれ」が描かれていて、そんなしかけも嬉しいです。
*今なら! 翻訳者の斎藤さんのサイン入りの本をご用意しています。ご希望のかたは、数に限りがありますのでどうぞお早めに。
★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。


