
ベスト 👍 フィクション
『ミオよ、わたしのミオ』
アストリッド・リンドグレーン 作
菱木晃子 訳
酒井駒子 絵
岩波書店 刊
2026年1月 発行
2310円(税込)
222ページ
対象:小学校高学年から
あなたは知ってますか? あの男の子のゆくえを
9歳の少年ボー・ヴィルヘルム・オルソン(ボッセ)は、去年の10月15日、ストックホルムで行方不明になりました。彼はどこへ行ったのか、それを知るのはボッセ本人だけです――彼は瓶の魔人に連れられて、本当の父親が待つ<はるかな国>へ旅立ったのでした。海に浮かぶ緑の美しい島、バラやユリの甘い香りが漂い、美しい音楽と小鳥たちのさえずりであふれ、幸せに満ちた国でボッセは王子ミオとして親友(ユムユム)と愛馬(ミラミス)にも出会います。しかし、この幸福には常に不吉な影がつきまといました。それは、この国の人々を脅かす残酷な騎士カトーの存在で、はるか昔から彼を倒すことを予言されていたミオは、恐ろしい<死の森>を抜けて、黒い湖の向こうに建つ騎士の城へと旅立つことになるのです。
現実の世界では生みの両親を知らず、継父母には冷たく扱われ、近所の子どもたちからもいじめられていたボッセ(ミオ)は、<はるかな国>で初めて愛される幸福を知った時、その幸せを脅かす騎士カトーと戦う道を選びます。しかし、ミオは決して恐れを知らぬスーパーヒーローではありません。残忍な騎士カトーが恐ろしくて泣き、冒険に出たことを震えながら後悔し、怯えながらも一足一足進み続ける道行きは読者にとっても恐ろしく苦しいものですが、同時に旅の行く末を見届けないではいられない気持ちにさせます。
物語には昔話的な要素がいたるところ見られ、それがミオの冒険を前に進める大きな役割を担っています。そして、ユムユムのつぶやき(「ぼくらがこんなにちっぽけでなくて、ふたりきりでなければいいのに……」)を始めとする登場人物たちの繰り返されるセリフも、昔話を髣髴とさせます。この畳みかけるような語りが緊迫感を高めていく効果は絶大です。
物語全体には常にある種の切なさが漂います。それは「感涙必死!」のような謳い文句で煽られる作品とは一線を画し、しかしいつまでも心に残り続けるものです。ファンタジーの世界でミオに与えられる試練がこれほどまでに読者の心に迫ってくるのはなぜか、大人の読者は自らの心の内を深く見つめるきっかけにもなるのではないでしょうか。(か)
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