ベスト 👍 詩
『歳月』
茨木のり子 著
岩波書店 刊
2025年5月15日 発行
990円(税込)
168ページ
対象:大人

没後に刊行された純粋な愛の詩集

茨木のり子はスパッとものをいう人という印象がとても強いですよね。なんてたって「自分の感受性くらい」とか「倚りかからず」とかの彼女の代名詞ともいえる詩が、そんな印象だもの。
でも! この詩集はだいぶ違います。

本書は最愛の夫を亡くしたあとに書きためていた詩編たち。生前、この詩の存在を知る人はそう多くはなかったそうです。出版されたのも彼女の没後、ということで刊行時、話題になったことを覚えています。そんな詩集の文庫化!
刊行にいたるまでの来歴は巻末に付された甥の文章、「Y」の箱に詳しいので、ぜひお読みいただきたいと思います。これだけでも、なんだかじぃ~~~んとしちゃうのです。

改めて『歳月』を読み終えて、茨木のり子の女性性に触れた気がします。気ばっかり張ってられないよね、ってのは俗っぽすぎる感想かもしれないけれど、率直なところはそんなかんじ。やさしさ、たおやかさ、かわいらしさまで感じます。
こんな風に誰かを思えるって…言語化できるって……いいな。

2014年(!)に世田谷文学館であった「茨木のり子展」のことも思い出しました。「Y」の箱、の展示室では涙ぐんでしまったなあ。「強い気持ち強い愛」ーーオザケンの歌じゃないけど、そんな言葉もよぎったりしました(笑)。

それから詩人でもある小池昌代氏の解説も詩を楽しむためのよき手助けになりそうです。じっくり、手元に置いてふとした時にページを開きたくなる、そんな1冊です。ひとりでも誰かがこんな風に思ってくれていたら、誰かを思えたら…それは非常に幸せなことですね。 (す)

★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。

お問い合わせフォームへ