クリーンヒット⚾ フィクション
『ルーミーとオリーブの特別な10か月』
ジョーン・バウアー 作
杉田七重 訳
小学館 刊
2021年11月 発行
定価1,650円(税込)
331ページ
対象:中学生から

負けないし、あきらめない! パピーウォーカーとして成長していく少女の物語

2歳で母親を事故で亡くし、今度はガンで父親を亡くした12歳のオリーブは、会ってから2週間しかたたない16歳年上の母親違いの姉・モーディーと一緒に暮らすことになりました。借金取りに追われて住み慣れた家を離れ、古いシェアハウスに移り住むことになったオリーブ。モーディーの新しい職場にいやいやついて行った彼女はそこで子犬ルーミーと運命の出会いをします。ルーミーはただの子犬ではなく、盲導犬になるための訓練を受ける特別な子犬でした。ルーミーのパピーウォーカー(*)にどうしてもなりたいオリーブは、姉や同居の人たちを説得するためにも真剣に自分と向き合います。しかし大好きな犬と暮らす夢のような生活は、12歳の少女にとって大きな責任を伴う仕事でもあったのです。

オリーブの置かれた状況は客観的に見てかなり厳しいものです。とても明るく元気に見えるオリーブですが、従妹や姉の恋人の心ない言葉次傷つき、苦しい胸の内をカウンセラーに打ち明けることもあります。けれども姉モーディーの愛をうけ、自分自身もルーミーにありったけの愛を注ぐことで現状を力強く変えていくオリーブに、読みながら思わず声援を送ってしまいました。

物語はルーミーの危機と、10か月経た後の別れがどうなるか、読者をハラハラさせながらも、最後は感動の結末を迎えます。
「悲しみでこわれてしまった心も、愛でつなぎあわせれば、新しい世界をつくっていけるんだって。」というオリーブの言葉に、読者は未来へのまぶしい希望をみることでしょう。(か)

(*)パピーウォーカーとは、盲導犬候補のパピー(子犬)を生後2か月齢から1歳前後までの約10か月間、家族の一員として迎え、人と一緒に安心して暮らすための関係づくりと家庭でのルールを教えるボランティアのことです。(日本盲導犬協会HPより)

 

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