doroboスイスの作家オットー・シュタイガーの作品『泥棒をつかまえろ!』が童話館出版から新装版として復刊されました。この本はかつて佑学社という出版社から刊行されていたもので、もう長いこと品切れになっていたものです。私は子どものころにこの本を読んで、忘れられな印象を受けました。勇ましいタイトルから想像される愉快な冒険の物語ではなかったこと、人間とはなんと恐ろしいものかと思ったことを覚えています。あとがきで翻訳者の高柳英子さんが「ごく普通の少年たちが、いつ、どのような状況下で、集団で悪夢のような狂気に走ってしまったのか。読者ひとりひとりに、それを自分のこととして考えてみてほしい。(中略)作者はそう言いたかったのかもしれません」と書いていますが、子どもの世界でも大人の世界でもいじめや差別感が蔓延している今の時代にこそ、読んでおかなければならない本だと思います。地味な本ではありますが、ぜひ中学生~大人の方にご紹介したい作品です。