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『ベルリン1919 赤い水兵(上・下)』
クラウス・コルドン 作
酒寄進一 訳
岩波書店 刊
2020年2月 発行
本体各1200円+税
(上)348ページ/(下)398ページ
対象:中学生以上

時代の転換期を描く「ベルリン3部作」 第1部

世界を巻き込んだ戦争が4年以上も続き、人々の生活は困窮を極めていた1918年――ベルリンの貧しい労働者が暮らすアッカ―通り37番地に住む13歳の少年ヘレの元へ、前線から帰ってきた父親も右腕を失くしていた。いつまでも終わらない戦争に対して、ついに末端の兵士と労働者たちが立ち上がり、皇帝を追放して国の体制を覆す革命がおこる。ヘレは両親、教師、友人、近隣の住人、反乱を起こした水兵など様々な人と関わりながら、この革命を身をもって体験することになるのだが……。

1918年11月の第1次世界大戦の終結は、革命によるドイツ帝政時代の終焉とそれに続くワイマール共和制の出発という大きな時代の転換点であり、その後のドイツの運命を決定づけました。しかしこの革命はわずか1年で潰え、“忘れられた冬”となってしまったのです。あの時、パンと平和を求めて戦った人々の思いは、時代の中でどのようにもみ消されていったのでしょうか。

激しい内戦を経て帝政から共和制へと移行した時期を描く『ベルリン1919』――物語の主人公ゲープハルト一家は架空の人物ではありますが、彼らの苦しみと憤りと時代を変えようというエネルギーは本物です。なぜこの革命が民衆の願ったものにならなかったのか、読者一人一人が物語を通して考えていかなければならないでしょう。それは同時に、私たちがいま生きているこの時代について考えることでもあるからです。

ある登場人物がヘレにこう語りかけます。
「物事をすばやく変えようとすることに、そもそも意味があるのかどうか、そのところがわしにはよくわからないんだ。だから、革命や血を流すことに反対なんだよ。不正と戦うには時間がかかるんだ。武器で戦ってはだめだ」

これに対するヘレの考えはこうです。
……不正を正そうとすれば、別の新しい不正が生まれるというのが本当なら、なにも変えず、どんなひどい目にあっていても、じっとがまんしたほうがいいということになってしまう。戦争でたくさんの犠牲者が出ているときに、のんびり変化を待っているような悠長なことはできない。……

どちらが正しく、どちらが間違っているということではありません。「自由と平和とパン」を望まない人はいないけれど、そこに至る道に何を選ぶかは人によって異なるのです。彼らの選択と行動、そして時代の行く先を見守ってほしいと思います。(か)

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