ベスト👍 ノンフィクション
『りんご だんだん』
小川忠博 写真・文
あすなろ書房 刊
2020年2月 発行
本体1300円+税
32ページ
対象:幼児から

だれも見たことのない りんごの「その後」346日

1個のりんごが朽ち果てていく様子を連続写真で見せていく――ごくシンプルな絵本ですが、衝撃的な作品です。

表紙にあるのはつやつやと光る、おいしそうな食べごろのりんご。それが色がだんだんと褪せ、皮にしわが寄り、じゅくじゅくと茶色い水分が出て、白いカビが生えていくそのリアルな変化は、自然から生まれたものが自然に還っていく当たり前のプロセスを、自分が全く知らないという事実を突きつけます。もはやりんごとは呼べない茶色の塊と化したそれは、小さな生きものたちによってさらにぼろぼろの粉のようになっていき、1年経つともう、まるっきり土と同じような姿になってしまいました。

この絵本には解説は全くありません。テキストも「りんご つるつる」などその時々の状態を短い言葉で示すだけです。だからこそ346日目の「りんご とうとう」が非常に説得力を持ちます。何十年たっても分解されずそのままの姿で存在し続けるプラスチックと、1年で土に還ったりんご。命が循環してまた次の命のもとになるということを実感するのは難しいけれど、こんな切り口から命や環境について考えてみる時間があってもいいのではないかと思いました。 (か)

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