ベスト👍 フィクション
『あしたの幸福』
いとうみく 著
松倉香子 絵
理論社 刊
2021年2月 発行
本体1400円+税
285ページ
対象:中学生から

中学生の女の子雨音(あまね)が、もがきながら彼女にとっての「幸福」を探す

雨音は父親と2人暮らしをしていました。しかしある日突然、事故で亡くなってしまいます。まもなく結婚を控えた彼女と一緒に……。それまで生活していたマンションに中学生1人で暮らすわけにはいかず、紆余曲折の末、雨音を産んだ国吉さんと暮らすことになりました。国吉さんはちょっと独特な性質をもった人でした。言葉を額面通りに受け取り、すべてのことに臨機応変、ということが難しい様子です。
そんな国吉さんとの共同生活ぶりを軸に、友人とのかかわりなど等身大の悩みを描き出します。

現代的なテーマも盛り込まれていますが、テーマが前面にでることはなく「物語」として素直に楽しめます。雨音と一緒に読者はハラハラしたりしながら自分にとっての「幸福」をみつけだせるのではないでしょうか。

作者は2012年に『糸子の体重計』(童心社)でデビュー後、コンスタントに作品を発表しています。絵本のテキストから本作のようなYA作品までと対象年齢の幅広さも魅力のひとつかと思います。どれも子どもたちにとって身近な話題をうまく物語にしている、旬な作家のひとりでしょう。今後も数は多くなくてよいので(笑)、良作の発表を期待したいです。 (す)

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