ベスト👍 ノンフィクション
『挑発する少女小説』
斎藤美奈子 著
河出書房新社 刊
2021年6月30日発行
定価946円(税込)
273ページ
対象:中学生から

子どもだから、女だからって、見くびらないで!
   『赤毛のアン』『あしながおじさん』……発見に満ちた少女小説の世界

文芸評論家として筆を振るう著者による、少女小説指南。取り上げられている作品はよく知られたものばかりですが、だからこそ案外きちんと読んでいない方も多いのでは?と思います。

各章のタイトルがまず見事。読んでみたくなります。”魔法使いと決別すること:バーネット『小公女』” 、“資本主義社会で生きること:シュピーリ『ハイジ』”、“自分の部屋を持つこと:ウェブスター『あしながおじさん』”、といった具合で、他に『若草物語』『赤毛のアン』『秘密の花園』「大草原の小さな家」シリーズ、『ふたりのロッテ』『長くつ下のピッピ』について論じています。

子どものときには気づきにくい、物語の書かれた社会背景などにも触れてありますが、小気味いい文体もあって「へ~」とか「あ!」なんて言いながら読み進められます。著者は特に児童文学に明るいということではないですが、とにかく様々な本を読んでいる方だけあって読み解きは的確だし、ヘンにマニアっぽくなくて読みやすい! サバサバした言い回しに時折、声を出して笑ってしまったほどです。
今までこれらの本を読んだことのない方に特に読んでほしい。そして、1冊でもこの少女小説を読んでいただきたい! 強く、そう思いました。これらの物語を読んできていて「〇〇が好き」なんて方にもぜひ。新たな発見があるに違いありません。また再読してみたくなるかも。

個人的には「ピッピ」の読み解きには児童文学畑ではない著者だからこそ、気がつけた視点かもと思いました。本書にある指摘は、わたしは初めて出会いました。そして納得。すごくおもしろかった! それが何かはネタバレになりかねないので、ご自身で確認してくださいね(笑)。美奈子節ともいえる文章はやっぱり、さすがです。思わず一気読みでした。 (す)

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