クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『壊れた脳と生きる 高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』
鈴木大介、鈴木協子 著
筑摩書房 刊
2021年6月10日 発行
定価1012円(税込)
287ページ
対象:中学生から

脳に傷を負った当事者と、高次脳機能障害を専門とする医師が語りつくす。
                  ……「見えない障害」をわかってほしい!

41歳で脳梗塞を発症して、高次脳機能障害が残った著者のひとり大介さん。高次脳機能障害とは、脳の損傷により注意力や記憶力、感情のコントロールなどに問題を生じ、日常生活や社会生活が困難になることを指します。その障害は見た目にはわかりにくいことも多いそうで、周囲の理解を得にくいのだとか。もともと文筆業だった大介さんが「当事者」として困りごとを専門の医師に語った記録が本書です。

大介さんがまず困ったことは、体の不調のときに使う「こっちに曲げると痛い」の「痛い」に相当する言葉がないこと。病後、人の話を聞くことに不自由を感じていたそうですが、耳が聞こえないわけではない。相手の話に理解が追い付いていかないもどかしさを抱えていた。それは見たばかり、聞いたばかりのことを記憶にとどめることができない特性ー「作業記憶(作動記憶)の低下」のため。
これは困りごとのごく一部ですが、大介さんが丁寧に言葉を選び、語り、それを専門家が受け答えしているためにその他の「見えない障害」もよく見えてきます。

自身が当事者になり、援助職と呼ばれる人たちにも理解が進んでいないことを感じた大介さん。自身の経験や感じたことを提示することで、改善できることはないのか専門医のきょう子先生と考え抜きました。
本書に書かれていること(大介さんに起きたこと)は、誰にでも起こりうることで、「私には関係ない」ことではないはず。高次脳機能障害を持つ人が生活しやすい環境になることは、誰にとっても生活しやすい世のなかになるのでは、と思いました。
身近にも気がついていないだけで、大介さんのような困りごとを抱えている人はいるのかもしれません。  (す)

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