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『ブラザーズ・ブラジャー』
佐原ひかり 著
河出書房新社 刊
2021年6月30日 発行
定価1672円(税込)
198ページ
対象:中学生から

新しく弟になったのは、ブラを好きな男の子だった!

高校1年生のちぐさは、父の再婚で新しい母・瞳子(とうこ)さんと中学2年生の弟・晴彦と暮らすことになりました。ある日ちぐさは、晴彦がブラジャーをつけているところに遭遇します。「これはきっと学校の保健や道徳の授業で習ったLGBTってやつ?」と慌てるちぐさ。しかし晴彦は言います。「ちげーよ! ふつうにおしゃれでやっているんだよ!」と。「いったいブラのどこがおしゃれだって言うのよ」「どこって……。デザインとか、形とか、おしゃれじゃん……。刺繡だって、すげえし……」。
ちぐさは驚きますが、戸惑いつつもこの弟を受け入れようとします。しかし、ひょんなことでクールを装う晴彦を傷つけてしまう。

表題作のほか、晴彦の父親との関わりを描く書き下ろしの「ブラザーズ・ブルー」を収録。装丁の色味やレモンのイラストの意味がわかります。表紙も内容にあっていて素敵です。

ちぐさはイマドキのどこにでもいそうな高校生です。等身大なかんじの描き方が〇。とはいえ、父親のことを「悟くん」と呼ぶちぐさや本作の設定は「小説」ならでは? でも事実は小説より奇なり、とも言います。案外、どこかに同じような、いやもっとスゴイ(!)家庭があってもおかしくないかもしれません(笑)。

今風なシチュエーションを盛り込みつつ、爽やかな読後感に好感がもてます。本作は第2回氷室冴子青春文学賞大賞受賞作にして、著者デビュー作。今後の活躍に期待したいです。
初めて瀬尾まいこの『卵の緒』を読んだときのかんじに似ている、と思いました。 (す)

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