ベスト👍 フィクション
『タフィー』
サラ・クロッサン 作
三辺律子 訳
岩波書店 刊
2021年10月28日 発行
定価2310円(税込)
412ページ
対象:中学生から

暴力に傷ついた心の再生の物語

父さんの暴力の支配から逃れるため、家を出た16歳のアリソン。彼女の独白として詩形式で紡がれた物語です。終始、彼女の視点で語られるその心の声は痛みを伴います。

顔にひどいやけどを負い、行き場のないアリソンは空き家と思われる納屋に身を隠します。ところが、そこにはマーラという老女が住んでいました。マーラは彼女に「タフィー?」と呼びかけます。昔の友人と間違えている様子。どうやら認知症を患っているようです。
そんな二人は同居するようになりますが…。

アリソンは暴力をふるう父親のことを愛していると思い続けていました。そして父からの愛を求めていました。その思いは、読んでいてとても辛い…。でも彼女の気持ちがよく伝わってきます。

本書は、カーネギー賞を受賞した『わたしの全てのわたしたち』の著者による新作。『わたしの~』も詩形式で綴られた物語でした。「詩」という文学の力を感じます。言葉のリズムがよりダイレクトに伝わり、物語に深みが出るように感じました。読んでいて胸が痛む描写もありますが、読後感は爽やかです。 (す)

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