ベスト👍 ノンフィクション
『心とからだの倫理学 エンハンスメントから考える』
佐藤岳詩 著
筑摩書房 刊
2021年8月10日 発行
定価1078円(税込)
319ページ
対象:中学生から

整形でキレイになってよいか ーーあなたはどうする? 社会はどうなる?

テレビをつければ美容整形のCMがよく流れる昨今。韓国のアイドルやスターの大半は整形しているとも聞かれますね(どこまで真実かはよくわかりませんが……)。身近になったように感じる整形。整形で新しい(?)身体を手にしてもよいのでしょうか。また能力や性格を薬で変えることは、どうなのでしょう。

本書では医学や科学の技術を使って人の心や身体を作り変えたり、別のものに取り替えたり、はたまたその性能を強化することの良し悪しについて倫理学の観点から考えます。というと難しいように感じるかもしれませんが、案外、身近な話題だと思いました。先日まで北京で開催されていた冬季オリンピックでもフィギュアスケートの選手のドーピング問題がニュースにもなりましたよね。

目次を拾ってみると……第1章「容姿を整えるー美容整形の倫理を考える」、第2章「運動能力を増強するードーピングの倫理を考える」、第3章「身体を機械化するーサイボーグ化の倫理を考える」、第4章「認知能力を向上させるースマートドラッグの倫理を考える」、第5章「気分・感情・性格を変化させるー感情抑制の倫理を考える」、第6章「性を一致させるー性別移行をめぐる倫理を考える」、第7章「遺伝子を操作するー遺伝子操作の倫理を考える」、第8章「善人をつくりだすーモラルエンハンスメントの倫理を考える」となっています。

どの項目も賛成派、反対派の意見をバランスよく配しています。変化により、わたしやあなたと社会はどうなるのかをひたすら考える1冊。立場によって賛成、反対の意見は変わることもあるかもしれません。どちらの立場であっても、暮らしやすい環境に少しでもなるといいなと思います。

それから「エンハンスメント」という言葉、耳慣れないですね。わたしもこの本で初めて耳にしました。“増強”“強くすること”という意味の英語だそう。治療とエンハンスメントはつながっていて、簡単に切り離せるものではないそうです。 (す)

 

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