ベスト👍 詩
『うたをうたうとき』
まど・みちお 詩
渡邉良重 絵
アノニマ・スタジオ 刊
2022年2月28日 発行
定価2420円（税込）
84ページ
対象：小学校中学年から
世界はこんなにも美しい ーー “ホスピタルアート”から生まれた本
詩人まどさんの新しい本が出ました！
まどさんは2014年に104歳で永眠されていますが、まだ新しい本が出るなんて素晴らしい！
しかし、「今またどうして？」と思ったのも事実です。出版の経緯は巻末に書かれていました。山口県の病院でのプロジェクトがきっかけとのこと。それはスウェーデンで始まった「ホスピタルアート」と呼ばれるプロジェクトでした。「病院（ホスピタル）」のなかにアート作品を設置するというものです。
山口大学医学部附属病院が病棟の新設にあたり、「ホスピタルアート」を取り入れることを決定。そしてアートを依頼されたのが渡邉良重さんでした。山口県生まれの山口の大学を卒業されていた彼女は、依頼を快諾されただけでなくひとつの提案をしたそうです。それは山口県生まれの詩人まど・みちおさんの詩をモチーフに絵を制作したいというもの。この提案は着々と進んで2019年3月、病棟の完成とともに絵と詩が奏でるハーモニーが多くの人の目を楽しませ、心をなごませることになったそうです。
このことを踏まえて、頭からページをめくると不思議な感覚にとらわれました。収められている絵の数々は病院の壁を彩るもの、現物は本に収まるサイズではないということ。ずいぶん華やかに感じる色づかいの絵ですが、その理由がわかった気がします。ーー 実際の絵を体感してみたくなりました。
収録されている詩は「地球の用事」「くまさん」「どうしていつも」「空気」「よかったなあ」など16篇。ゆったりとした文字組のおかげで、詩の世界がさらに大きく感じられます。知っている詩ばかりなのに、どれも新しいと思いました。
そして「今、このとき」読むことの意味を考えてしまいました。まどさんの詩の世界は全く古びないどころか、いつの時代にも寄り添うように思います。この本をきっかけに、多くの人にまどさんの詩の世界を知って、親しんでもらいたいものだと強く感じました。（す）
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