クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください 17歳からの民主主義とメディアの授業』
西田亮介 著
日本実業出版社 刊
2022年4月 発行
定価1760円(税込)
357ページ
対象:高校生以上

政治家にいい人なんていません。選挙に行かないと政治家に好き勝手されちゃいます。

政治にはあまり関心がなく、難しくて自分には関係がないと思っている人に向けて書かれた本。「17歳から」と副題にありますが、大人にちょうどいい内容でした。

「我々の生活はすべて政治とかかわっている」と言われますが、普段の暮らしの中で政治のことを常に意識している人はそれほど多くないでしょう。政治が自分に関係ない次元で起こっていることだと思えるのは、社会がそれなりに回っている証なので、ある意味幸せなことかもしれません。日本は治安がよく、今のところ憲法に記載された様々な自由もある程度は確保されていて比較的暮らしやすい国ですが、様々な問題――公文書改ざんや隠ぺい、政治家や官僚の不正、少子高齢化による人口減少、社会格差と差別……etc.――を抱えていることも事実です。そこで私たちが政治に無関心で投票にも行かず、社会問題の解決をアナタ(=政治家)任せにしてしまうと、権力を持った人たちは好き放題してしまう危険があるのだと、著者の西田さんは言います。「選挙に行くかどうかは自分の権利だから、行かない自由もある」という意見は一見もっともそうに聞こえますが、選挙権の行使を通して社会に自分の意思を示すという面倒を放棄することで、やがて自分に跳ね返ってくる危険を想像する必要があるのです。

国民主権で「主役は君だ!」と言われても、自分の1票にたいした価値があるとは思えない。国を動かしているのは一部の上のほうにいる人たちでしょうという、諦めにちかい気持ちが社会全体を覆っているように感じられます。でも、自由民主主義の国で国を動かす力を持っているのは本当に一人一人の国民なのです。しかし力を発揮するためには、政治を監視し選挙権を行使するというコストを一人一人が払わなければなりません。そのことなしに私自身が暮らしやすい(暮らしたい)社会を作ることはできないのです。

戦後日本の自由民主主義はまぁまぁ合格点だったと思います。でも、もっと公正で人権が保障されたよい社会にするためには、アナタ任せにしないことが大事! 冒頭の一文を心にとめて「選挙に行くのは必要なコストだ」と割り切りましょう。西田さんも「投票に行かなくてもいいけど、行くのが普通かなみたいな状態にしたほうがいいとはよく思います」と言っていますよ。(か)

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