ベスト👍  ノンフィクション
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ 著
新潮社 刊
2019年6月 発刊
254ページ
本体1,350円+税
対象:中学生以上

「子どもはすべてにぶち当たる」
英国在住のパンクかあちゃんと「元底辺中学校」に入学した優等生の息子が差別や格差、貧困、アイデンティティといった壁にぶち当たりながら進む毎日をつづったノンフィクション。

刊行以来、各方面で話題を呼び、初版から約1年で瞬く間に19刷といまだその勢いは衰えを知りません。
なぜ、それほどに多くの人の共感を呼ぶのかーー。
それはひとつに読者が彼らと一緒になって悩み、考え、心を震わせる追体験ができるからでしょう。

カトリックの名門小学校から180度異なる中学校に入学した著者の息子は数々の問題に直面するのですが、その時の彼の疑問や言葉は読者の心を射抜きます。

「人種差別は違法だけど、貧乏な人や恵まれない人は差別しても合法なんて、おかしくないかな。」
「ホームレスの人から物を貰っちゃったりしても、いいのかな、ふつう逆じゃないのかなってちょっと思ったけど。でも、母ちゃん、これって……善意だよね?」
「どこかに属している人は、属してない人のことをいじめたりする。それは悪い部分だよね。でもその反面、属している仲間のことを特別に守ったりするでしょ。……(中略)……でも、僕はどこかに属している気持ちになれないから、それがどちらもないんだ。悪い部分も、いい部分も、ない。」

あなたなら、なんと答えますか?

ノンフィクションといっても堅苦しさはまったくなく、物語を読んでいる感覚を味わえることもまた人をひきつける理由です。
これを読まずして何を語ろう、と思える1冊。老若男女問わずおすすめです! (い)