クリーンヒット⚾ 絵本
『ナナはセラピードッグ』
ジュリア・ドナルドソン ぶん
サラ・オギルヴィー え
福本友美子 やく
BL出版 刊
2021年2月10日 発行
本体1,500円+税
32ページ
対象:幼児から

触れ合って傷を癒す「セラピードッグ」

みなさん、「アニマルセラピー」という言葉を聞いたことはありますか?
動物と触れ合うことで得られる精神的・身体的な安心安定は生活の質を向上させ健康になるといわれ、広く治療の一環として用いられてきました。日本でも、特別に訓練された「セラピードッグ」が病院や介護施設を訪れているのを目にしたことがある方もいるでしょう。

この絵本はそのセラピードッグであるダルメシアンのナナが病気の子どもたちのもとへ出かけていき、子どもたちを元気づけるストーリーです。
怪我で思うように動けなくてうんざりしている子、熱があって泣いている子、お医者さんや付き添いの大人たちでさえも、ナナがくると顔にぱっと花が咲いたようにみんな笑顔になります。
頭をなでて体に障って、時には一緒になって遊びまわって。
みんな、ナナに会えるのが待ち遠しく、気持ちが明るくなる様子が描かれています。

ところがある日、耳の聞こえない男の子をかばって車にはねられてしまったナナ。
6週間もギブスをはめて安静にしなくてはならなくなり退屈していたところへ、今度は子どもたちがお見舞いに来てくれるという結末は、犬にとっても他者とスキンシップを図り愛情を感じることが心身の治癒につながっていることが伝わります。

もうじき震災から10年。
被災し傷ついた人々とセラピードッグについて書いた記事を何かで目にした記憶があります。心の闇にからめとられて行き場をなくした安らぎを深淵からゆっくりと救い出してくれるのもまた、ナナのような存在なのかもしれません。(い)

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