ベスト👍 絵本
『オサム』
谷川俊太郎 文
あべ弘士 絵
童話屋 刊
2021年3月 発行
定価1980円（税込）
32ページ
対象：幼児から
「いいひと」を絵に描いたら ゴリラになった！
谷川俊太郎さんに「ぼくのゆめ」という詩があります（詩集『ぼくはぼく』に掲載）。
童話屋の編集者・田中和雄さんが、この「ぼくのゆめ」の中の“いいひと”の絵本を作りたいと谷川さんにお願いしたら、「“いいひと”をコトバに書くのは難しいので絵で描いてほしい」といって、「オサム」の文を書かれたそうです。そうして谷川さんの文を読んだあべ弘士さんがたちまち描いたのがこの絵本『オサム』なのです。（といって、冒頭の言葉に戻ります）
動物園の飼育員としてたくさんの動物（人間も含め）を見てきたあべさんが、いいひとを絵に描いたらゴリラになったということに、とても深いものを感じます。
谷川さんが言葉で描き出した人間のオサムから、バトンを手渡されたあべさんが描いたゴリラのオサムへの広がりを見るとき、詩人と画家のそれぞれの物語が共鳴しながらより大きな世界に発展していくような心持ちがします。
あべさんの絵で表現されたゴリラという生き物の、すべてを包み込むような大きさと力強さと謙虚な優しさが、「こんな人でありたい」と見る人に感じさせる、とても魅力的な詩絵本です。（か）
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