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『もりのなか』や『ペニーさん』、『赤ちゃんのはなし』で知られる絵本作家のマリー・ホール・エッツの新刊が入荷しました。といっても原著の刊行は1967年ですから、今からほぼ50年前のものです。主人公はメキシコから移住してきた家族、その中の小さな男の子ロベルトです。
この中に描かれているのは、時代や地域を超えた子どもの姿そのものです。言葉がわからず色々なことが思うようにいかない上に、異なる文化の中でやり場のない思いを抱えていた(その上母親が家を出て行ってしまうのです!)ロベルトが、子どもセンターで少しずつ英語を覚え、友だちができ…と、一歩ずつ階段を上るように成長していく姿は、とても感動的です。そして彼の書いた手紙がきっかけで、母親が家族のもとに戻ってくる場面には胸が熱くなりました。エッツがセツルメント活動で出会った子どもをモデルに描いた本書は、子どもの持つ生きる力の強さを感じさせてくれます。絵本としては文章が長く、一見地味な作品ですが、今年最初にこれほど読むべき作品に出会えたことをとても嬉しく思いました。

★ちなみに、同じくメキシコ系の男の子を主人公にした『ジルベルトとかぜ』(冨山房/1200円+税)は、昨年日本で出版されてから40年を迎えたそうです!

『ロベルトのてがみ』マリー・ホール・エッツ作/こみやゆう訳/好学社 1600円+税