まど・みちおさんの詩の中でも「ぞうさん」についで有名ではないか…とひそかに思っているのが「はるがきて めがさめて くまさん ぼんやり かんがえた」という「くまさん」の詩です。これは小学校1年生の教科書にも載っているそうですので、学校で暗唱した記憶をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。この詩がこぐま社から絵本になって登場しました。前回「ぞうさん」を絵本にしたのは西巻茅子さんでしたが、今回は『あがりめさがりめ』などのわらべうた絵本を数多く手がけられている、ましませつこさんです。
春の緑は薄く柔らかく、木々にはまだ葉はあまり見られません。でも地面にはふきのとうやつくし、たんぽぽやすみれなどが芽吹き始めています。そんな中、寝ぼけ眼で巣穴から出てきた小さなくまの子は、なんだかちょっぴり困った表情を見せています――それもそのはず「ぼくは だれだっけ」なんですから。ですから自分が「くま」だとわかったときの嬉しさは、特別だったことでしょう。最後の満面の笑みが何よりそれを物語っています。この絵本を子どもたちがどんな風に楽しむか、ナルニア国のおはなし会で、一刻も早く紹介したい気持ちがむずむずと沸き起こってきました。
『くまさん』まど・みちお詩/ましま せつこ絵/こぐま社 900円+税