クリーンヒット⚾ 絵本
『ありがとう、アーモ!』
オーゲ・モーラ 文・絵
三原 泉 訳
すずき出版 刊
2020年8月28日 発行
本体1,500円+税
32ページ
対象:幼児以上

人をおもいやるということ

男の子の持つおわんからコラージュのゆげがたなびいています。
ゆげはそのまま長くのび、裏表紙へと続いていきます。先にあるのは黒人のおばあさんが持つお鍋。どうやらこのお話にはお鍋が関係しているようです――。

バス通りに立つアパートのてっぺんの部屋で、アーモは今、大きなお鍋いっぱいにシチューを作っているところ。
「いままでで さいこうの ゆうごはんに なりそう」
本を読みながらシチューを煮込んでいると、誰かがドアをたたきました。
立っていたのは、ぼうやです。
いい香りにうっとりしているぼうやに、アーモは特製シチューを分けてあげます。
すると、しばらくして今度はおまわりさんがやってきました。

シチューの香りにつられ町中の人が次々とアーモの家の扉をたたき、そのたびにアーモはみんなにシチューをふるまいます。当然、お鍋はからっぽに。
がっかりしたアーモですが、その晩はちゃあんと「いままでで さいこうの ごちそう」になったんですよ。

奇をてらったり、はではでしく装飾したりすることなく編まれたストーリーには、作者の祖母を慕う心が基盤にあります。ナイジェリア出身の祖母と両親を持つオーゲ・モーラは、この作品で昨年のコールデコット賞オナー賞を受賞しています。

あなたは最近、胸の内に湧きあがるような「ありがとう」を誰かに伝えましたか? (い)

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