堀内誠一さんが1970年に描いたグリム童話の「あかずきん」が、版も新たによみがえりました。50年前の絵本をご存知の方はそう多くないと思いますので、初お目見えと言っても問題はないでしょう!
印象的なのはあかずきんの姿です。「ずきん」というにはだいぶオシャレな帽子をかぶった女の子は、色白で金髪に青い目(まつ毛が長い!)の美人さんです。昔話からイメージする素朴な主人公よりもずっとあか抜けていて、他にはない「あかずきん」でした。ビビットな色彩の再現も現代の技術があってこそなのでしょう。おおかみを描いた場面の大胆な構図と合わせて、新しい「あかずきん」をお楽しみください。
★この本、見返しがとってもきれいです。見落とさないように!

もう1冊はアンデルセンの“TOMMELISE”(日本語では「親指姫」という翻訳が一般的――詩人の木島始さんは『おやゆびちーちゃん』と訳しました)の、数年ぶりの復刊です。といっても今回はただの復刊ではなく、原版を最新技術で製版しなおした新規製版のちーちゃんなのです。
この作品の原書は1967年、『あかずきん』よりも古く今から53年前です。絵には詳しくないので確かでありませんが、見ると鉛筆や色鉛筆を使って描かれているらしく、その線一本一本のタッチが驚くほど緻密に繊細に再現されていて、触れると描いた後の凹凸が感じられそう。色は以前の版よりずっと深みが出てより原画に近いものになったそうです。堀内さんの絵の美しさを存分に再現し読者に伝えるために、印刷する紙も選ばれたのではないでしょうか。最近は汚れが付きにくい丈夫なコーティングされたピカピカの表紙の本が一般的ですが、光沢が抑えられた落ち着いた質感の表紙はため息が出るほどの美しさです。これはぜひ皆さんの目で確かめていただきたいと思います。
「誰もが知る名作を、原作のもつイメージによみがえらせたい」と木島さん・堀内さんが力を合わせて作られた絵本を、限定復刊のこの機会にお求めいただければと思います。

『あかずきん』グリム童話/大塚勇三訳/堀内誠一絵/福音館書店 1400円+税
【限定復刊】『おやゆびちーちゃん』アンデルセン作/木島始訳/堀内誠一画/福音館書店 2000円+税