bunko
このところ、もともと児童文学として出たものを大人の文庫で出しなおすということが多くなっています。あさのあつこさんの『バッテリー』や、上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』シリーズは、それぞれ文庫になったことで読者層が広がり、「子どもの本なんてつまらない“子供騙し”に過ぎない」と思っていた(であろう)多くの大人が、「児童書もなかなか面白い作品がある!」と気がついたという意味で、私たちは喜んでいるのですが、これがあまり進むと「えー!これも文庫になってしまうの!?」と、正直かなりの衝撃を受けることがあります。実はこの2点もそうなのです。もちろん、どちらの作品も元々は子どもの読者を想定して書かれた、正統派の児童文学です。大人が読んだっていいのですが、どうして文庫に?ハード版のまま買ってくださるといいのに…。本は内容が命なのは当然ですが、そのたたずまいも含めて楽しみたい、手触りや紙の質など本を作っている内容(情報)以外の要素も、読書には大切なものだと思うのです。なんでも簡易な文庫になってしまうと、「私の本棚にこんな本がほしい」と思えるような魅力的な装丁の本がなくなってしまうのでは!?と不安に駆られてしまいます。本好きとしては、物体としても“本”も大切にしていきたいと思うのです。