ベスト👍 ノンフィクション
『主人公はきみだ ライツのランプをともそうよ』
中山千夏 著
出版ワークス 刊
2019年11月  発行
本体1,500円+税
191ページ
対象:小学校高学年以上

きみのランプは輝いていますか? そして、きみのとなりのランプも輝いていますか?

とても大切なことなのに、なぜか敬遠されていること(考え)が世の中にはたくさんあります。“人権”もその一つです。その言葉を口にしただけで「なんか面倒な人」と思われそうですし、うるさい人と避けられそう。
でも、もしかしたらそれは“人権”という言葉に問題があるのかもしれません。言葉からイメージされるものが、本来そのものが指し示す理念とかけ離れているとしたら……。そんな目からウロコの視点を与えてくれるのがこの本です。

英語で“権利”は“right”といいます。そして、日本語の“権利”は明治時代に新しく生みだされた言葉です。日本にはrightに該当する言葉がなかったため、当時の学者が苦労して編み出した翻訳語だったとか。しかし、それは今から見ると多くの問題をはらんだ言葉でした。
rightには“正しい”という意味があるのに、日本語になったright(権利)からはその意味がなくなってしまったという指摘も、そう考えると腑に落ちることがたくさんあります。人権(human rigths)は本来「人間としての正しさ*」を示す言葉であって、その権利(right)は何かしらの義務と一体になるものではないはずなのに、日本語では“所有権”や“著作権”などの言葉と同様に扱われている――だから権利を主張すると「その前に義務を果たせ」などと言われるのだと、おかしいと思いながらモヤモヤしていた霧が目の前で晴れた気がしました。

権利という言葉には不具合がある、でも変わる言葉はうまく見つけられない。そこで中山さんはいっそのこと英語のまま「ライツ」と呼んでしまおうよ!と主張します。

――「ライツとは、「権力」や「利益」とは関係ない言葉であって、「人間が生まれながらにそなえている正しさ、人間としてのあたりまえのこと」という意味なんだ(52p)」というメッセージは、様々な問題を抱えたこの社会を生きる上での指針を与えてくれるような気がします。
私も自分のライツのランプを高く掲げたい、そして回りの人のライツのランプも同じように大切にしたいと思っています。(か)

*中山さんは「行いの正しさということではなく、人間ならば誰でもそうであって当然という意味の正しさである」と、本の中ではもう少し詳しく語っています。

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