クリーンヒット⚾  ノンフィクション
『ほんとうのリーダーのみつけかた』
梨木香歩 著
岩波書店 刊
2020年7月 発行
本体1,200円+税
70ページ
対象:中学生以上

自分の“あるべき姿”を問いかけるーー

タイトルに思わずドキリ。

「ほんとうのリーダー」、反芻すればするほど重みのあることばですよね。

「ほんとうの」という形容詞にも「リーダー」という響きにも尊さやまぶしさを覚える反面、掲げられた聖剣からつと目をそらしたくなる自分自身の脆弱さを突かれたように感じました。

それというのも、作中に登場する田中さんのように同調圧力に負けてしまったり意見することを諦め長い物に巻かれたりすることに、私自身少なからず覚えがあるからです。

多くの人がそうであるように、私も自分の意見を持つことや意思表示することの大切さを教わってきたはず。それなのに自分を取り巻く社会が広がるにしたがって、本音と建前を使い分けるようになりました。俗に言う“大人の事情”というものです。本来子どもたちの手本となるべき大人がこのようであるとは、なんとも空々しいですよね。
相手や周囲を斟酌する、あるいは忖度する(政治的に用いられることが増えましたが)ことが悪なわけではありません。物事を成す過程でそうしたステップを踏むことはむしろ必要なことで、客観的・多角的に考えてたどり着いた終着点が梨木さんのことばで言う「盲目的に相手に自分を明け渡さず」、“私”という個人を形成する土壌となればよいのです。

これは、そのためにも正しい判断ができる「チーム・自分」を持つことの必要性を子どもたちに説いた本です。

今、私たちはSNSという手軽に自己表現できる場を持ち、それゆえに安易に人を傷つけたり傷つけられたりすることが増加しています。そして嘆かわしいことに、それはコロナ禍においてより顕著なように思われます。
今一度、人と人、人と社会のかかわりを見つめ、「ほんとうの自分」を己に問うてみる必要性に駆られた私は、4回目となるこの本を開いています。 (い)

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