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『音楽の肖像』
堀内誠一/ 谷川俊太郎 著
小学館 刊
2020年11月4日 発行
本体2,500円+税
157ページ
対象:大人

さあ、どの音楽を聴きましょうか

子どもの本に関心のある方だったら『ぐるんぱのようちえん』の絵を描いた堀内誠一さんをきっとご存知ですね。
そして、谷川俊太郎さんとのコンビによる『マザー・グースのうた』に強い印象を持っている方も多いのではないでしょうか。

そのお二人によるこの本は、堀内誠一さんによるクラシックの作曲家28人の肖像とエッセイ(数人の作曲家について肖像画のみ)に、谷川俊太郎さんの作曲家にまつわる詩が彩を添えるという心躍るもの。
センスと品格のある装丁も、ページをめくる嬉しさをあたえてくれます。

堀内誠一さんのエッセイは縦横無尽!作曲家の伝記を熱心に読まれていたそうですが、作曲家のプロフィールや作品の紹介が書かれているわけではありません。作曲家のゆかりの土地のこと、生きた時代や文化のことなどが時に横道にそれながら(これが楽しい!)語られています。

ボヘミア出身のドヴォルザークの風貌の話題からヨセフ・ラダの絵が引き合いに出され、ドビュッシーが子どものためのオペラ『おもちゃ箱』を作曲した際につくった絵本仕立ての楽譜集に、画家アンドレ・エレを起用したなど、絵本好きにはたまらない話題も盛り込まれています。

肖像画は作曲家によって描き方が全く異なり、その地に実際に足を運ばれたからでしょうか、それぞれが生きた土地の匂いや時代の空気が感じられます。
音楽家たちが通った酒場に一歩足を踏み入れば、堀内誠一さんには音楽家たちの姿が見え、声が聴こえていたかのようです。

谷川俊太郎さんの31篇の詩のうち、13篇は書き下ろしです。
巻頭の詩は堀内誠一さんに捧げられたもの。そして、巻末の谷川俊太郎さんのプロフィールの最後にあえて、

「堀内さんはモーツァルトと同じく、夭逝の天才としか言いようのない人です」(谷川俊太郎)

と、記されていることに、堀内誠一さんへの友情とオマージュが伝わってきます。(や)

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