ベスト👍 ノンフィクション
『なっちゃんの花園』
寮 美千子  著
西日本出版社 刊
2021年9月28日 発行
定価1320円(税込)
266ページ
対象:中学生から

なっちゃん 81歳 「今が一番幸せ」

久しぶりに本を読んでお日さまに照らされような気持になりました。
それもとびきり明るい元気なお日さま。
お日さまの名前は、「なっちゃん」
奈良に住む在日二世81歳の女性の物語です。
作家の寮美千子さんが、ひょんなことから出会い、
「秘密の花園」のなっちゃんの家に通う中で聞いた
なっちゃんの半生を綴ります。

戦時中、強制連行で連れてこられた父親が日本で結婚し
生まれたなっちゃんですが、小学校に入学まもなく
酷い差別を受け、泣く泣く退学をします。
それ以来、読み書きができなかったなっちゃんですが
50歳を過ぎてから、夜間中学に通い、初めて読み書きが
できるようになりました。
二度の結婚の中での虐めのような差別、
ごみ溜めだった夢の島での過酷な暮らし、
子どもを育てるために昼も夜もなく働いた毎日……。

一つひとつ挙げていくと暗く不幸な半生のように思えますが
なっちゃんの語りには暗さは微塵もありません。
読み終えた後に残るのは、心地よい太陽の光をいっぱいに
浴びたような清々しさと温かさ。

寮美千子さん、よくぞこの物語を書いてくださいました。
なっちゃん、よくぞ寮さんに語ってくださいました。

重苦しい空気が長くこの世を覆っている今だからこそ
ひとりでも多くの人に「なっちゃんの太陽」を浴びてほしいと
心から思います。           (く)

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